オラクル圧勝の理由を考えてみました
アリンギ対オラクルの対決直前のちまたの憶測では風が微風(3m/秒くらい?)以下の場合はアリンギが有利、それ以上ならオラクルと言われていました。

理由はとしてはカタマラン(双胴船=アリンギ)の方がトリマラン(三胴船=オラクル)より軽い。
マルチハル(多胴船)では軽い船が有利。 特に微風では圧倒的に有利。
軽い艇は先に風上側の船体を空中に出すことができて抵抗が半分になる。トリマランは重くて不利。
アリンギがあそこまで微風のアラブ首長国連邦での開催を主張していたからには微風で有利に違いない。
私はオラクルが有利ではないかという気がしていましたが、巷の噂もあり、レーススタートまでなんともいえない気分でいました。
実際のレースの展開はみなさまご存知のとおり、オラクルの圧勝でしたし、艇そのものの性能差もドラマチックなものでした。
これについてはレースのビデオを見ると思い出せます。
第33回アメリカズカップのビデオ
カタマランは軽いので復原力が小さく、傾斜角度が大きいので風上側の船体が水面から出ています。
トリマランは重たいので復原力も大きく傾斜角度が小さい。
中央船体も水の中で、二つの船体が水から抵抗を受けています。
ではなぜオラクルがアリンギをしのぐ性能を発揮することができたのでしょう?
結果が出た後でコメントするのは気が引けますが、解き明かしてみたいと思います。
常識と考えられたカタマラン有利には実は大きな見落としがあります。
通常、単一規格クラスヨットを規定する場合、性能を決定する三つの要素を規定します。
船の長さ、(艇速のポテンシャル)
船の重さ (抵抗)
帆の面積 (推進力)の三要素です。
これらは通常、より細かく規定されます。
長さは水線長、全長、先端部形状などにより修正されます。
帆は面積のみでなく、高さも規定されます。

ここで、今回のアメリカズカップのルールを見ますと、水線長(喫水線の長さ)90フィート以下という規定だけで後はすべて自由です。
つまり、オラクルはトリマランの中央船体(と風上の船体)を空中に出すために必要な力を得るためにセールの大きさを必要なだけ大きくしていけばよかったわけです。
風は水面から高くなるほど強く吹いていますのでセールを高くするとなおさら大きな力が得られます。

トリマランが重たくても不利とはいえないことがこれでわかりました。
しかし、なぜオラクルはトリマランを選択したのでしょう??
次頁
前頁